暴走する政策をどう止めるか?
前編では、欧州の無謀なEV規制を例に「現場や物理法則を無視した政治がどれほど産業を自爆させるか」を見ました。しかし、これは遠い外国の話ではありません。日本国内でも全く同じ構造の「現場無視のパフォーマンス政策」が繰り返されてきました。
私たちはどのようにして「ダメな政策」を見抜き、国や地域を滅ぼす投資を止めるべきなのでしょうか。
1. 日本で起きていた「現場無視」のパフォーマンス事例
日本でも、政治的アピールや理想論が先行し、現場の悲鳴を無視して推し進められた結果、迷走・撤回に追い込まれた事例が数多く存在します。
- 大学入試改革(英語民間試験・記述式導入の断念): 「思考力」「グローバル化」というスローガンで導入を決定したものの、50万人規模の採点体制や経済格差といった現場の問題を無視。本番直前に白紙撤回となりました。
- イージス・アショア(陸上迎撃システム)の突如撤回: 政治主導で導入を決めたものの、「切り離したブースターを演習場内に確実に落とす」という物理的・技術的な検証を後回しにした結果、巨額のコストと期間が判明して撤回されました。
- マイナ保険証移行の混乱: 「紙の保険証の全廃」という期限ありきのパフォーマンスを強行した結果、現場でのトラブルが多発。最終的に「資格確認書」を一斉配布することになり、実質的な二重運用へと後退しました。
2. 「利権」や「大型投資」はすべて悪なのか?
政策の裏には常に政治資金や業界への利益誘導(利権)が存在します。しかし、「利権=悪」とは限りません。 私利私欲や政治的思惑から始まった投資であっても、結果として国民全体に莫大な還元をもたらした「成功事例」も存在します。
- 田中角栄の「日本列島改造論」: 新幹線・高速道路網が高度経済成長と現代の物流を支える資産に。
- 米国の「軍事予算(ペンタゴン)」: インターネットやGPSが民間に開放され、現代IT社会の基盤に。
私利私欲のベクトルと「将来の社会的ニーズ」が合致していた場合、当初の利権の額を遥かに上回る経済効果が後世に還元されます。
3. 【フレームワーク】良い投資と悪い政策の「4つの見極めシート」
ニュースや選挙で新しい政策・大型投資が発表された際、それが「後世へのプレゼント(資産)」になるか「ただのツケ(負債)」になるかを見極めるための4つの判定軸です。
- [Check 1] 物理的な「資産(インフラ・技術)」が形に残るか?
- [Check 2] 物理法則や現場のオペレーションに無理はないか?
- [Check 3] 構造内に「健全な競争」が保たれているか?
- [Check 4] 他の民間分野へ「応用(スピンオフ)」できるか?
- 良い投資(結果オーライ型): 予算の使い道が「道路」「港湾」「汎用技術」など形に残り、完成後に維持費以上の経済効果を生み出すもの。
- 悪い投資(ドブ捨て・負債型): 「コンサル料」「PR費」「複雑な行政手続き」など形に残らないものに消える。また、将来の人口減少による「維持費用(ランニングコスト)」が考慮されておらず、後世に膨大な補修費だけを残すもの。
4. 有権者(私たちが)すべきこと 〜「見極める眼力」〜
無能な政治家や悪法を淘汰するために、最も必要なのは有権者側のリテラシーです。
政治家は常に2つの選択肢を前にしています。
- A: 「2035年にCO2ゼロ!」「全員に〇〇を無料配布!」という、簡単で耳に心地よい嘘
- B: 「エネルギー確保には〇〇兆円かかり、技術的限界があるため段階的に進めます」という、地味で複雑な真実
私たちが「A」の安易なスローガンに拍手喝采を送っている限り、政治家は何度でもパフォーマンスに走り、現場を破壊する政策を作り続けます。
「その政策は形に残るのか?」「物理的・現場の裏付けはあるのか?」「後世の維持費はどうなるのか?」という冷徹な視点を持つこと。それこそが、暴走する政治にブレーキをかけ、真に価値ある投資を社会に残す唯一の手段です。